【外国人の静岡観光レポート】古民家の中で、自分で打った茹でたてそばを食べる

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【外国人の静岡観光レポート】古民家の中で、自分で打った茹でたてそばを食べる

日本での食事の中でも代表的な料理のひとつが「そば」。そばの実を粉にしたそば粉が原料です。このそばを自分で作る「そば打ち体験」ができる施設が、伊豆の国市にあります。自然に囲まれた日本の古民家の中で体験してきました。

私が体験しました!

TONG DUY QUANG(トン ユイ クアン)さん

ベトナム出身。
来日3年目の静岡大学情報学部1年生。旅行やスポーツ、写真が趣味。そばは学食などでよく食べている。そば打ちは今回が初体験。


粉を練って、のばして、たたんで、切るそばづくり


今回そば打ち体験をしたのは、伊豆の国市にある「大仁瑞泉郷」です。施設の中にある日本の古民家の中で、そば打ちをします。まず初めに、そばについての説明を聞きました。そばは中国から日本に渡ってきた作物です。日本には1300年ほど前の奈良時代には伝わっていたそうですが、現在のような細い麺のそばが登場したのは江戸時代から、というような歴史についても教えてもらいました。あと、ヨーロッパのクレープ(ガレット)もそば粉を使ったものということで、その広がりに驚きました。


次に、デモンストレーションで、石臼でそば粉を挽いてみました。少量のそばの実を石臼の穴の中に入れて取っ手をまわすと、石臼の隙間からそばの殻と実の粉が出てきます。ベトナムでも、石臼はよく見かけましたが、自分で使うのは初めてです。


石臼が重いので、最初に力を入れないと回しにくかったです。少しだけ回しましたが、出てきたそば粉も少しだけ。手で回す石臼でそば粉を作るのはかなり時間と力がいる仕事だと思いました。昔のそば屋さんは大変だったと思います。


そば粉100%のそばは、十割(じゅうわり)そばと呼びます。そば屋さんで食べるのは、そば粉8対小麦粉2の二八(にはち)そばが主流だそうです。ここのそば打ち体験では、有機栽培で育てられた北海道産のそば粉を使った、二八そばを作ります。
「ふるい」にかけたそば粉はふんわりと軽やかになり、香りをかいでみると、クルミのような香りがしました。
このあと小麦粉もふるいにかけ、2種類の粉を良く混ぜるため、手で優しくこするように混ぜていきます。


次に、「水回し」という作業をします。数回に分けて、水を少しずつ入れて、よく粉と混ぜていきます。だんだん粉が固まって、丸い雪玉のような形になります。かたまりや手指に付いたものもつぶしながら、全体にまんべんなく水分を含ませていきます。最初に粉を触ってみた時、粒子が細かくて冷たく感じました。自分でも使ったことがある小麦粉や片栗粉などとの感触の違いもわかりやすかったです。


次にさらに水を入れて、かたまりをつぶさないように、指の間で転がすようにして、最後には丸い大きなかたまりにします。こね鉢にまだ付いている粉も集めながら一つにまとめて、そして、まとめた生地を手前に折り、手のひらで強く前に押しながらこねました。力をよく入れたので、手がちょっと疲れました。


数分間こねたそば生地をのし板に置いて、手のひらで優しく平たくつぶして広げ、丸い形にしました。その後、麺棒でさらに薄くします。


ある程度薄くなったら麺棒に巻き付けて、のし板の上でやさしく転がします。四角にするために前後左右を変えてこの作業を繰り返し、四隅の角を出していきます。


一番難しかった、薄くのばして切る作業


次に生地を広げて、四角い形にしながら、厚みも均一になるように、1mm前後まで薄くのばしていきました。ここが、一番難しい段階だと思いました。生地の丸い形から四角い形にのばすのは、なかなか難しかったです。生地を一気にのばそうと力を入れすぎると周りがヨレたり破れてしまうので、注意しながらゆっくりとのばしました。私はちょっと失敗してしまって、きれいな四角にならなかったのが残念です。


そばの生地を薄くのばしたら、のし棒で支えながら、生地をたたみます。手前から奥に向けて半分にたたみ、さらに長辺を三つ折りにします。切る前に形を壊さないようにと、緊張しました。


実際に生地を切る前にまな板の上の粉だけで練習してから、そばを切りました。切ったら少しずつ取り分けて容器に入れておきます。私は自信をもって、どんどんそばを切っていきました。


簡単だと思っていましたが、切ったそばをよく確認したら、太さがバラバラでした。同じ幅で細めに切るのは難しかったですね。


そば打ち体験の多くは、切る工程までというところが多いそうですが、ここでは茹でる作業も自分でできます。沸騰したお湯の中に、そばをパラパラとほぐしながら入れます。お湯が吹きこぼれそうになったら、差し水を足しながら、約2分茹でていきます。2分経ったら1本取り出し試食をしてみて、麺の硬さや粉っぽさを確認しました。もう少し茹でて柔らかくしても大丈夫だと言われましたが、硬すぎず、柔らかすぎない程度のほうが美味しいと思いました。


茹であがったらざるに上げて、すぐ流水で洗います。これは、表面のぬめりを取るためです。その後は、冷たい氷水に入れてそばを締めます。それによってそばに歯ごたえが出ます。


最後にそばの水気をしっかり切って、ざるに盛ったらできあがりです。基本的には冷たいそばを味わうのですが、この日はとても寒かったので、特別に温かいおつゆも用意してもらいました。どちらも美味しかったです。


有機栽培の本わさびをすりおろして「薬味」にしてみました。初めてわさびをすりおろしましたが、とても面白かったです。普段、回転寿司で食べるわさびやスーパーで買ったわさびなどと比べると、本わさびの色はもっと薄く、辛みだけでなく甘みもあります。そばつゆに入れてもいいのですが、そばに直接つけて食べると、甘みを感じ、あまり辛くなかったです。
そばを食べ終えた後に残ったそばつゆに、そばを茹でたお湯「そば湯」を入れて飲みましたが、ここでもそばの甘みなどをしっかり感じられました。


そば打ちを体験した建物(古民家)は、新潟県から移築された、江戸時代の農家の家です。園内に全部で4棟あり、200年ほど前に建てられた家が完全な形で残されていて感心しました。


昔の日本の農機具を展示してる建物もあり、中を見学させてもらいました。畳を敷いてあるお茶室もあります。
冬だったので、暖房のない建物の中に入っても寒く、昔の日本人はよく我慢できたなぁと思いました。


園内にある売店には、施設の農場で育てられた野菜や有機栽培の原料で作られた食品や調味料が販売されていました。
軽食を提供する食堂もあります。ここでは、素材にこだわった自家製のソフトクリームが人気と聞き、食べてみました。牛乳本来のとても柔らかく軽い甘味を感じ、とても美味しかったです。


感想

私は3年前に日本に来てから、茶道体験や書道体験などをする機会がありましたが、今回、初めてそば打ち体験に参加しました。
ここでは、あらかじめそば粉と小麦粉の温度を測っていると聞き、とても驚きました。その温度によって、二種類の粉がつながりやすくするために、水の温度を冷水やぬるま湯に変えて調整することもあるそうですが、季節や部屋の温度、そして、そばを打つ人の体温によってもそばの仕上がりが変わると聞いて、とても繊細なものなのだと思いました。教えてくれた橋本さんは、そば打ちを始めて10年くらい経つそうですが、より美味しいそばができるように、いまでもいろいろと研究をしながらそば打ちをしているそうです。
出来上がったそばは、普段、学校の食堂で食べているそばとは比べものにならなかったですね。ねぎの苦味、わさびの甘味と合わせて、最高でした。
また、この「大仁瑞泉郷」は桜やツツジなど、いろいろな花が植えられています。春から秋は季節の花々や紅葉などが見られるので、その時にまた来てみたいと思いました。


information

●施設名/大仁瑞泉郷
●住所/伊豆の国市浮橋1606-2
●電話/0558-79-1118
●営業時間/9:00~16:00
●体験受付時間/10:00~(所要時間は120分)
●定休日/木曜
●入園料/無料。そば打ち体験料金2200円(小学生以下は1100円)

※体験で打ったそばは、その場で茹でて食べ、持ち帰りはできません。
※体験の申し込みは2名から受け付け。グループの場合は、一つのこね鉢に対し2~3名ずつに分かれての体験となります。

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