【外国人の静岡観光レポート】城下町の伝統織物「葛布織り」にチャレンジ

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【外国人の静岡観光レポート】城下町の伝統織物「葛布織り」にチャレンジ

掛川の名産品「葛布」。工芸品として人気のある葛布は、美しい光沢と丈夫さが特徴で、江戸時代には武士のはかまとしても使われていました。掛川城下町にある明治3年創業の老舗葛布織元で、昔ながらの織機を使った葛布織りを体験しました。

私が体験しました!

スミルナ ウィラワンティパタンドゥングさん

インドネシア、トラジャ出身の22歳。静岡産業大学経営学部1年生。国際交流に積極的に参加。特に異文化に興味があり、日本の各地に出掛けたいと思っている。


つるも根も、捨てるところがない植物、葛


葛布織りを体験するのは、掛川市にある手織葛布の「こたけや川出幸吉商店」です。掛川は掛川城が有名で、JR掛川駅から徒歩10分ほどで、お城に着きます。「こたけや川出幸吉商店」もお城の近くにありました。店の前には「葛布」と書かれた大きな看板があります。


お店に入ってすぐ見えるのが、この織機です。これは幅の短い葛布を織るもので、もう一台、幅の広い機械が並んでいました。できあがりの商品に合わせて織機を変えます。奥には、和室にある襖に貼る、もっと広い幅の葛布が織れる織機もあるそうです。


お店の中には、色とりどりの葛布で作られたコースターなどの小物やバッグ、小銭入れ、掛軸などが並んでいました。どれも表面にツヤがあってきれいです。


葛布織り体験は、葛布についての説明を聞くことから始まります。ビデオを見ながら、昔から現在までの葛布の歴史や葛から繊維を取り出す手順を、ご主人が説明してくれます。
その昔、掛川の山中にある滝の側で修行していた行者が、滝水に打たれて白くさらされている葛の繊維を見つけ、この土地の人に繊維の取り方を教えたという言い伝えもあります。
壁には葛の造花が飾られています。本物はもう少し葉が大きいそうです。今でも道路の脇や川の土手、山に自生していて、根は葛粉にして食用にします。


葛のつるは、釜で煮た後、2日間かけて表皮を腐らせて中身の繊維だけ取り出します。これらの工程には水をたくさん使うので、川のそばで作業をします。それを洗い、乾燥させ、細かい糸に裂いていきます。
糸の太さは織るものによって変えるそうです。裂いた糸を何本も結んで巻いて長い糸にして、織機で使えるようにまとめておきます。これを「葛つぐり」といいます。葛の糸を作るまでに結構時間がかかるとわかり驚きました。


ビデオを見た後は、昔の侍が着ていたはかまを見せてもらいました。ズボンのようですが、もっと長いです。葛布は丈夫でシルクのような光沢があったので、偉い人達も身につけていました。
掛川では、城下町にあったお店で売られていた葛布を、侍達がおみやげとして買って行きました。


お店には、300年くらい前の江戸時代に作られた看板が残っていました。表には漢字で「葛布」、裏にはひらがなで「くずぬの」と書かれています。その後、「かっぷ」と読まれる時代があり、今は「くずふ」と読んでいます。この看板を見ると、「の」の文字が、昔と今で使われているひらがなが違っていて驚きました。


そして、100年くらい前の写真も見せてもらいました。葛の糸を作るのは女性の仕事で、おばあさんから若い娘まで、家にいる女性がみんなで作業をしていたそうです。


織機に座って、葛布を織る


織機で体験をする前に、糸を使って「葛結び」を作りました。片方にだけ糸の端が出る「葛結び」は、結び目が小さく糸の端が同じ方に向いているので、織物にした時にきれいに仕上がるようです。
ご主人がゆっくりと教えてくれたので一回でできました。思ったより簡単でした。


いよいよ織機での体験です。実際に座って織ってみると、作業がしやすいなと感じました。昔から使われている道具だからなのだなと思いながら、もし私も自由に使えたら、自分が欲しいものを作りたいなと考えました。このような織機は、母国のインドネシアにもありますが、使う糸や織り方が異なります。


織り方は同じことを繰り返していくので簡単です。あらかじめ通してある2本の綿の縦糸の間に、葛の糸を通します。糸を触った時に少し冷たく感じました。これは、糸を濡らしてあるためです。すぐに切れてしまうのではと少し不安でしたが、切れたら結んで、また織っていけばいいと言われて安心しました。
葛を濡らして織るのは、その方が強度が増して、丈夫な布になるからです。葛の糸が入った船の形をした「ひ」を右左に行ったり来たりさせ、織れば織るほど、楽しくなりました。


織機の足元にはペダルがついていて、糸を通すたびに、右、左と順番に踏みます。すると、縦糸の上下が入れ替わります。ペダルを踏んだら、「おさ」と呼ばれる織機の部品でトントンとたたくようにして、縦糸に通した葛糸を手前に寄せます。この作業を繰り返していきます。少し強めにたたくと、折り目に隙間ができずにきれいに仕上がります。


織り上がった部分は写真のようになります。布になった部分を触ったら、少し硬くなっていました。織る前の糸は濡れていましたが、水分が抜けて丈夫になったようです。葛の糸はコットンやシルクとは違ってハリのある、しっかりとした手触りでした。
体験で織った分は、一週間ぐらいでコースターに仕上げてもらえます。近い人はお店まで取りに来るそうですが、遠方の場合は自宅に送ってくれます。届くのが楽しみです。


感想

日本で800年も前から行われていた、葛布織りというものづくりを体験したことは、私の中で一つの貴重な経験になりました。今まで、手織り機を使ったことがなく、初めてチャレンジしました。最初は難しいところもありましたが、織っていると、どんどん楽しくなっていきました。ぜひ、もう一度手織葛布を織ってみたいです。今度は、できれば葛糸作りも最初からやってみたいと思いました。


●施設名/こたけや 川出幸吉商店
●住所/掛川市仁藤町7-3
●電話/0537-24-2021
●FAX/0537-22-1685
●営業時間/10:00~17:00(体験所要時間は約1時間、電話かFAXで1週間前までに要予約)
●定休日/不定休
●体験料/3000円、作品送料